スペクトラムニュース

<<IgEテストに対する最近の見解>>
An informational overview on in-vitro allergy testing
 
 
Spectrum Labs,Inc.のSPOT TESTは、日本独自のアレルゲン92種類に対する特異的IgEを測定しております。現在、世界29ヶ国の獣医師にサービスを提供しており、日本国内では2001年4月以来、約20,000頭の犬・猫・馬の検査を行っております。
◆IgEテストについて

血液検査によるIgEテストは抗原特異的IgEの有無を検出しております。アレルギー症状を呈する動物と無症状の動物を比較した場合、検出されたIgEの数と症状には相関関係が必ずしも認められません。無症状の動物のほうが反応IgE数が多いこともありえます。それでは何の為の検査かということになりますが、「今、その動物のリンパ球がどのようなものを異物と認識し、抗体を産生しているかを検査し、それに対処すること」を目的としております。アレルギーの発症にはIgEの他に遺伝形質、他の環境因子も大きく関係していますが、未だその正確なメカニズムは解明されておりません。臨床的な判断を十分加味する必要があるのはいうまでもありません。


◆IgEの体内における状態

IgEは体内において、血中に遊離している(半減期は2〜3日)だけではなく、must cellに結合している状態でも存在し(感作状態)、それは数ヶ月以上も持続することがあります。また、繰り返しアレルゲンに曝露された場合、体内では"memory plasma cell"が産生され、これらのB細胞は長い間血液中に残ります。それがアレルゲンの曝露に反応し、記憶していた特異的IgEを多量に産生します。新たに血液中に遊離されたIgEは新たなmust cellに結合し、アレルギー症状を引き起こすという悪循環が生じます。
現在、生体内におけるIgEを測定する場合、経済的にも技術的にも「血液中に遊離しているIgE」を測定する検査以外は実際的ではありません。 SPOT TESTもこの「血中遊離IgE」を測定しており、IgEの悪循環を効果的に絶つために血液中に遊離したIgEをテストで把握し、どのような物質がアレルゲンとなり得ているのかを検出していくことが必要です。

 

◆減感作治療から見たSPOT TESTの重要性

「アレルゲン回避と減感作療法はアレルギー疾患の自然治癒を修飾する可能性を有する唯一の治療様式である」とWHOの会議(1997年に開催)において発表された見解書で位置付けられています。また、見解書において「減感作療法を実施するのにあたり使用されるアレルゲンは主要なアレルゲンのみではなく一定の反応を示したアレルゲンを全て含むべきである」とされました。つまり多くのアレルゲンを検査し減感作治療をすることがより高い効果に結びつくとされます。Spectrum Labs,Inc.のSPOT TESTもまた減感作治療をより高い成功率へ導くことが最大限の目標です。その為に、広範なアレルゲン(92種類)を検査対象とし可能な限り鋭敏にしております(表1参照)。
Spectrum Labs,Inc.は検査結果をもとに減感作療法のための減感作薬をオーダーメイドで作製しております。
【表1】
【検査項目数による治療成功率】
(減感作と除去食を併用)
30 項目 45 %
50 項目 55 %
70 項目 70 %
92 項目 85 %
※Spectrum Labs,Inc.社内資料



◆非特異的IgEによる干渉(偽陽性)

血清テストにおいて偽陽性が現れる一般的な原因は、非特異的IgEの存在による干渉です。この非特異的IgEの多くは寄生虫が原因とされ、特異的IgEと比べて約30倍も多く産生されています。特に人間と違い犬・猫は未だ寄生虫に感染されている場合が多く、取り除くことが重要です。その結果、非特異的IgEは特異的IgEに代わり抗原に結合してしまい偽陽性の結果をもたらすことがあります。
Spectrum Labs,Inc.のSPOT TESTは、あらかじめ血清サンプルから蠕虫抗原を用いて非特異的IgEを吸着し、偽陽性を減らしています。


◆IgGによる干渉(偽陰性)

IgGは血清中に、IgEの約10万倍という高濃度で存在しています。その結果、一般的な血清テストにおいてIgGは、IgEが抗原に結合するのを妨害し、偽陰性の結果をもたらすことがあります。Spectrum Labs,Inc.のSPOT TESTは黄色ブドウ球菌の細胞壁から取り出したプロテインAを用いて、検査前にすべての血清サンプルからIgGを吸着しています。それによりIgGの干渉を取り除くことで偽陰性を減少させています。


◆アレルギー症状の始まる時期とアレルゲンとの関係

これまで、夏にアレルギー症状を示す動物は"食物"や"室内のアレルゲン(ハウスダストなど)"ではなく、おそらく"吸入アレルゲン(花粉など)"のみが影響しているだろうと考えられてきました。ご承知のとおりアレルギー閾値の概念によると、このことは必ずしも事実とは言えません。つまり、食物アレルギーの動物は花粉が存在していない冬には食物に対してIgEが産生されても、閾値以下のレベルでおさまるかも知れません。しかし、春・夏に花粉が多量に産生されている状態で、同じ食物を与えた場合、IgEレベルがアレルギーの閾値を越えアレルギーを発症し、逆に食物を除くことでIgEのレベルが閾値以下になり、症状から開放されるかも知れないのです。


◆アレルギーの発症年齢と適切な治療時期

・6〜8歳になって発症するアレルギーは稀ではありませんが、一般的にアレルギーは1〜3歳の間に発症します。テストに適する年齢は免疫システムが完成する12ヶ月齢以上とされ、一度でもアレルギーを発症したり、多量のアレルゲンに曝露された動物はSPOT TESTを行なって特異的IgEのレベルを測定する段階です。
・もし1歳より前にアレルギーを発症していた場合、原因は繰り返し食物にさらされた事による食物アレルギーであることが多いとされます。SPOT TESTを行い、原因と考えられる食物を制限することが推奨されます。

Did you know about these allergen・・・?
ご存知でしたか?
室内アレルゲンは、しばしば"隠れた"アレルゲンであり、なかなか目に付きません。そして思いも寄らない場所で発見されることがあります。
カポックとはカポック(別名:パンヤ)の木の種子からとれる繊維です。繊維は、軽く、水と腐敗に対して完全な抵抗性を持ち、救命用具、マットレス、ぬいぐるみやクッションの詰め物に使われています。
ジュートとサイザルは植物由来の天然繊維です。ジュータンや家財道具、天然繊維の衣類、靴、バッグなど広く使われています。
  減 感 作 療 法

減感作療法とは

先述のとおり、免疫療法とも呼ばれる減感作療法は、WHOにおいて「減感作療法とアレルゲン回避はアレルギー疾患の自然治癒を修飾する可能性を有する唯一の治療様式である」と位置付けられています。


・アレルギー検査会社と減感作薬製造会社
現在、欧米では獣医医療も含め広く利用され認知されている治療法です(表2参照)。


表2 ※アメリカ国内 人医療 獣医医療
検査のみ 約25社 3社
減感作薬の供給 6社  
検査及び減感作薬の供給   4社


その方法はアレルギーを発症している動物に、原因となっているアレルゲンのエキスを少しずつ、量を増やしながら一定期間にわたって皮下に注射していき、免疫システムが生活環境中に存在している"害を及ぼす物質(アレルゲン)"に対して感受性を低下させていく治療法です。つまり、減感作療法を通して動物が生涯、アレルギーを起こすことがないように免疫システムに働きかけていきます。


・アレルゲンワクチンの混合
減感作療法に使われる減感作薬には、IgEテストによりアレルゲン特異的IgEのレベルを測定し、一定以上の反応を示したアレルゲンが混合されています。


・減感作プロトコール
減感作療法は長年にわたる研究の結果、注射回数、薬に含まれるアレルゲン濃度、セット数など様々なプロトコールが開発されています。現在、世界的に標準化されたものはなく、各研究者・各ワクチンメーカーが独自のプロトコールを用意しています。


・アレルギー濃度の単位
プロトコール以外にも標準化がなされていない問題として、アレルゲン濃度の単位があります。PNU(Protein Nitrogen Units)で表しているものもあれば、w/v (weigh/volume)で濃度を表しているのもあります。PNUとは個々のアレルゲン中の蛋白質窒素量を表した単位、w/vはセットあたりのアレルゲンのグラムを測定した単位になります。他にも次のような単位が使われています。AU(allergy unit)、BU(biologic unit)、BAU(Bioequivalent Allergy Unit)、IU(international unit)。


・Spectrum Labs,Inc.の減感作プロトコール
Spectrum Labs,Inc.が推薦する減感作プロトコールは長年にわたって開発され、数十万頭の動物でテストされました。その方法は濃度の異なる3種類のバイアルを使い徐々に濃度を高めながら、9ヶ月間に渡って26回の注射を行ないます。
9ヶ月にわたるプロトコールの終了後、減感作の状態を維持していく為、月に一度維持用薬を注射し減感作状態を続けていきます(ブースター効果)。また、アレルゲンの除去・シャンプーの実施、およびオメガ3-6などの投与も治療中に行うことで効果的な結果を導きます。痒みがひどい場合、抗生物質、抗アレルギー剤やステロイド剤等の併用も有効ですが継続使用は極力控えてください。


スキンテストと血清テスト、または異なる検査会社からの検査結果を比較する理想的な方法は、その検査結果を基に減感作治療を行うことです。そして、その治療成功率が検査の有効性・信頼性とされます。
アレルギー治療を成功と判断するには主観的な面があり難しい問題です。一般的に、治療の成功と考えられるのは、相関した症状の減少と共に、ステロイド剤等の使用量減少、または依存性の消失とされます。




≪ 減 感 作 作 用 機 序 ≫

※減感作の正確な免疫学的機序は完全には判明していませんが、おおよそ以下のようになります。
減感作をはじめると免疫システムを刺激しIgGの産生を増やします。このIgGはmust cell上のIgEよりもアレルゲンと結びつきやすい性質を持っているため、アレルゲンがmust cell上のIgEと架橋する前に「吸い取る」役割を果たし、アレルゲンとIgEとの結合はmust cellレベルで少なくなります。結果としてmust cellの脱顆粒が減少し、アレルギー反応(T型)を減少させます。
また最近の研究でアレルギーの中心的な役割を果たしているTh cellのバランスが変化することも判明してきました。減感作を行うとTh cellは特異的IgEやサイトカイン(IL-4など)を産生するTh2から、IFN-γやIL-2などを産生しTh2の機能を抑制する働きを持つTh1の方向へ誘導されます。このTh2からTh1への変化により、アレルギー反応が抑えられると考えられています。
9ヶ月間のプロトコール終了後、動物は減感作の維持段階に移ります。今までの9ヶ月間は減感作の状態にするまでの前段階であり、その後、維持用バイアルを用いた月一回の注射で、安定した減感作の状態を維持していきます(ブースター効果)。基本的にはジステンパー等のワクチンと同様に一生涯継続していきます。
アナフィラキシー反応が起こる可能性は稀ですが、注射後30分は観察することが必要です。副作用はたいてい投与箇所における発赤、腫脹、掻痒であり、時々痒みの増大、嘔吐、下痢を伴います。これらの反応は通常、抗ヒスタミン剤でコントロールすることができます。さらに重度な反応の場合、エピネフィリンでコントロールします。
減感作薬投与中は、生体内で複数の免疫学的変化が起こっており、効果が現れるまでに長い時間を必要としますが、減感作の大きな利点としてアレルギー反応だけを抑え、さらにホルモンバランスなどに影響を与えないことです。ステロイド剤や抗アレルギー剤等の使用は対症療法であり根治的な治療法ではありません。長期間の投与は、様々な副作用を引き起こす問題があります。飼い主は減感作とステロイド剤等を比較し減感作の利点を認識し、仮に投与後数日または数週間にわたって副作用が発現された場合でも、悲観することはありません。




【参考文献】
1) Ivan Roitt, Jonathan Brostoff, David Male「免疫学イラストレイテッド(原著第5版)」、
多田富雄 監訳、南江堂(2002)
2) J Bousquet,R Locky,HJ.Mailing:WHO見解書,Japanese journal of Allergology,Vol.47 No.8(1998)
3) Spectrum Labs,Inc.社内資料

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